膝の手術
膝関節の変性疾患で最も多い変形性膝関節症に対する人工関節置換術を多く行っております。また中等度の関節症に対する矯正骨切り術も行っています。膝関節の外傷では半月板損傷や靭帯損傷に関節鏡を用いた手術を行っています。
術後合併症を予防するため内科・麻酔科医と協力し術前検査、周術期管理を行い、肺血栓塞栓症(PE)、深部静脈血栓症(DVT)の発生予防も積極的に取り組んでいます。
手術例
1.変形性膝関節症
1)人工膝関節置換術
強い膝の疼痛があり、さらに膝の変形のため立ち上がり動作や歩行に支障のある患者さんに行う手術です。骨を切除し、下肢のアライメントを矯正した後に人工の関節を装着する手術で、外観はもとより膝痛が軽減することで歩行能力が著しく改善します。片方の膝の手術の場合は術後約1か月で退院します。
(レントゲン写真)
術前 著明な変形を認めます |
術後 変形を矯正します |
(外観)
術前 | 術後 | 術前 | 術後 | |
著明なO脚変形が術後に真っすぐに矯正され歩行も楽になります |
2)いろいろな病態に対する人工膝関節置換術(TKA)
変形性膝関節症にもいろいろな病状があり、それぞれに対応しています。
@ 骨の欠損がある場合には骨移植を追加します
術前 内側の骨欠損を認めます |
術後 骨移植(切除骨)を内側に移植し関節を設置します |
A骨の欠損が高度の場合は骨移植と金属補填材を使用します
術前 | 術後 | 術前 | 術後 | |
骨移植のみで対応可能例 | 骨移植+金属補填材併用例 | |||
脛骨側の安定性を高めるため脛骨コンポーネントに金属ステムを使用します |
B外側型膝関節症に対する手術
術前 著しい外反変形を認めます |
術後 関節をまっすぐに矯正します |
B外傷後の関節症に対する手術
術前 骨折による骨の変形を認めます |
術後 バランスを考慮し人工関節を設置します |
C骨脆弱性(骨が弱い)の関節症に対する手術
術前 骨脆弱性を著しい関節症 |
術後 ステムを使用し強固に固定します |
3)人工膝関節再置換術(入れ替え手術)
以前に人工関節手術を行い、弛み、摩耗、破損が生じたため入れ替える手術です。
@脛骨骨圧潰による人工関節の沈下に対する手術
術前 人工関節の骨脆弱性による沈下 |
術後 ステムと金属補填剤を使用し再置換します |
A単顆置換術(UKA)後の弛みに対する手術
術前 インプラントの破損と沈下 |
術後 ステムと金属補填剤で再置換します |
B人工関節の骨融解による弛みと人工関節の破損に対する手術
術前 骨融解と人工関節の破損 |
術後 特殊な(拘束型)人工関節で再置換します |
4)脛骨高位骨切り術
膝の内側に限局する軟骨の損傷(関節症)があり膝の疼痛のため運動や歩行に支障をきたしている患者さんに、下肢の形態(アライメント)を矯正し膝の疼痛を軽減します。術後4週から6週間で退院します。
術前 軽度の内反変形 |
骨切り術後 骨切りで矯正した後にプレートで固定します |
術後2年(抜釘後) 矯正が維持されている |
実際の脛骨骨切り手術の手順
脛骨の骨切り | 脛骨の内側を開き骨移植 | 最後にプレートで固定 |
2.半月板損傷
半月板の断裂により膝の疼痛や運動制限を認める患者さんに対して、断裂の状態を確認して半月板の切除あるいは縫合を行います。手術は内視鏡(関節鏡)を用いて行います。
1)鏡視下半月板部分切除術
半月板の変性断裂を認めます | 断裂部分を切除します |
2)鏡視下半月板縫合術
断裂した半月板が偏位しています | 整復し縫合します |
3.前十字靭帯損傷
外傷により断裂した前十字靭帯を自家腱(主に半腱様筋腱や薄筋腱)で再建します。手術は内視鏡(関節鏡)を用いて行います
1)鏡視下前十字靭帯再建術
靭帯の断裂を認めます | 自家腱で再建します | 術後1年の再建靭帯 |
肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症の予防
1.術前対策
@血液検査(D-dimer値)
異常値を認める患者さんには詳細な画像検査を行います
A全例に下肢静脈エコー検査を実施しています
エコー検査風景 | エコー検査画像 |
B術前に血栓予防運動の指導と術前リハビリテーションを行います
2.術後対策
@術直後にフットポンプを装着します
術直後の写真(弾性ストッキング、フットポンプを装着)
A術後は十分量の補液を行い、術翌日から抗凝固薬の投与による予防も行います。
B早期離床、早期運動療法、弾性ストッキングを装着し歩行訓練を実施します。