手外科
Hand Surgery
当院の手外科について
手の疾患とその治療
手は第2の目とも言われる鋭敏な感覚と、精密な動作ができる運動器官です。
もし手が不自由になると、仕事や日常生活に支障をきたします。
当科では、手の機能回復を第一に考え、できるだけ早く社会復帰が可能となる最善の治療法を選択し、作業療法士と連携して治療にあたっています。
「手が痛い」、「手がしびれる」、「近くのお医者さんに診てもらったがよくならない」、「これ以上はよくならないと言われた」など、手のことで心配があるお方はお気軽に当院を受診してください。
手の専門医にはわかる、あるいは治療できる病気もたくさんあります。
代表的な手の疾患
手根管症候群
手首~手の平の神経が通るトンネルを「手根管」といい、ここで正中神経という神経が圧迫されることが原因です。この病気は女性に多く(男女比約1:5)、夜間や明け方にしびれが強くなり、手を振ることで症状が軽減することが特徴的です(軽減しない場合もあります)。進行すると母指球(親指の付け根の筋肉)が痩せ、物をつまむことが困難となります。
中高年の女性に多いため、更年期障害という診断を受けていたり、自分でもそう思い込んでいることもあります。
治療法としては、軽症の場合は内服薬や注射、リハビリテーション、装具療法を行いますが、重症例や症状がひどい場合には手術を行います。
当科では、より手術侵襲が少ない鏡視下手根管開放術(ECTR)を主に行っております。
手術は日帰り手術で約15分で、術後から手は使えます。農作業などは腫れるため、1週間ほどは控えた方がいいですが、「手術をしたら手が使えなくなる…」と心配な方もご相談下さい。

手根管症候群
(日本手外科学会、手外科シリーズより)


鏡視下手根管開放術(ECTR)
なお、重度の手根管症候群では母指球(母指の付け根の筋肉)が痩せ、物をつかむのが困難になります。そのような方にはなくなった筋肉を別の筋肉の腱で作り直すこともできます。


橈骨遠位端骨折
橈骨遠位端骨折とは、簡単に言うと手首の骨折です。人間の前腕(肘~手首)には2本の骨、橈骨と尺骨があり、手首の関節を主に形成するのが橈骨です。
橈骨の遠位端は骨粗鬆症の影響を受けやすいため、骨粗鬆症がある場合、転倒して手をつくことで容易に骨折を生じます。また、骨粗鬆症がなくても強い外力が加わった場合には骨折を生じます。元ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手も試合中にこの骨折を受傷し、手術を受けました。
治療は、骨折のずれがないか小さい場合にはギプスなどの外固定を行います。ずれがある場合の治療法は様々です。麻酔をかけてずれを手で戻し、外固定する場合もあるし、手術が行われる場合もあります。
前述したとおり、この骨折は骨粗鬆症のある老年期の場合が多く、骨が弱いため、昔は骨折を強固に固定することが難しく、手術をしても4~6週間手首を動かすことができませんでした。実際、かなり変形が残っても、「年だから仕方ない」と言われ、あきらめた方も多かったと思います。
しかしながら、近年では骨折を強固に内固定する器械が発達し、手術をすれば痛みはあるものの翌日から手首を動かす訓練を開始することができるようになりました。
当科では、正確な骨折の整復と内固定、その後のリハビリテーションにより、手術後1カ月で非受傷側の80%の可動域と社会復帰を目標としております。


粉砕を伴う橈骨遠位端骨折

術後
肘部管症候群
薬指~小指のしびれの場合、肘部管症候群の可能性があります。肘の内側で尺骨神経という神経が圧迫を受けることが原因です。
原因としては様々ですが、肘の変形性関節症のために靭帯やガングリオンなどの腫瘤で神経が圧迫されたり、子供の時の肘の骨折による変形などがあります。肘を曲げるとしびれが強くなることもあります。
進行すると親指と人差し指の間の筋肉などが痩せてきて、小指や薬指をまっすぐに伸ばせなくなります。指の細かい動作ができなくなり、箸を使うのが不自由となったり、字がうまく書けなくなります。
神経が圧迫を受けることが原因なので、神経伝導速度検査を受けることで診断が可能です。
筋肉がやせてほとんどなくなっている場合には、手術をしても回復に時間がかかり、回復しない場合もあるため、早期に適切な治療を行うことが大切です。

肘部管症候群
(日本手外科学会、手外科シリーズより)
この病気は変形性肘関節症に合併することが多く、肘の可動域制限が日常生活の支障となる場合(顔に手が届かないなど)、可動域を改善する手術を同時に行うこともあります。
骨・軟部組織再建
マイクロサージャリー(顕微鏡を用いた手術)は、切断された指の再接着の技術とともに進歩してきました。
当科ではマイクロサージャリーの技術を生かした骨・軟部組織の再建を積極的に行っています。


術前

再接着後


術後3ヶ月
血管柄付腓骨移植
骨の感染や外傷により広範囲の骨欠損に対して、反対側の下腿から血管のついた腓骨を採取し、これを患部に移植します。
通常の骨移植に比べて、生きた骨なので、骨癒合も早く、感染にも強い骨を再建できます。
骨と同時に皮膚・軟部組織も同時に再建できるため、難治性の偽関節に用います。

開放骨折後の感染性偽関節
骨の感染に対して抗生剤含有セメントビーズが挿入されている。

反対側からの血管柄付腓骨の採取
移植後術後のレントゲン写真

術後1年
完全に骨癒合しており、感染の再発もない。
肘関節屈曲不能な症例への広背筋移行術


術後1年
骨折の手術後の皮膚壊死

脛骨遠位部骨折の手術後
皮膚壊死を生じ、プレートが露出
汚染された組織を切除し、十分に洗浄

動脈皮弁(VAF flap)による再建術後